今日は親が手に入れた特別鑑賞券的なものでマイケル・ムーアの「シッコ」を500円で観ました。
劇場は天声人語にも取り上げられた事のあるNPO経営の深谷シネマ〜チネ・フェーリチェ〜。
非常に手作り感のあふれる映画館で、なにやら建物は銀行を再利用したそうで、
おかしいなぁと思っていた映写室のドアの上についていた金庫は本物だったのか!
座布団とひざ掛けを貸してくれるアットホームな映画館です。
 
M・ムーア作品は「ボウリング・フォー・コロンバイン」を途中まで講義で見たことがあるだけで
とりあえず映画と言うよりは現実をえぐるドキュメント、ということはわかっていました。
僕がレビューを読んでは映画を観た気になっている映画の批評サイトではとても評価が高かったものの、
「ボウリング〜」ではちょっと思想を押し付ける感がなじまなかったので
どうなるかなぁと少し心配していたのですが、
「シッコ」はメチャクチャ面白かったです。
 
アメリカの抱える保険問題は、対岸の火事、日本に関係ないじゃん。
って僕はそんな事は思うことなく、2時間スクリーンに釘付けでした。
まるで大学の講義を聴いているようでした。
保険の問題だけでなく、アメリカ人の思想感など伝わるものが多く、
ムーア監督の詰め込みのうまさには舌を巻きます。
アメリカの抱える問題が英仏、そしてキューバと比較されていく中で
「米国最高!母国最高!」と思っていた登場人物や観客が現実に打ちのめされていく構図は
日本と比べて愛国心というか国民性の違いも感じ取ることができました。
反米感情的コメントやアメリカが他国劣っている事実を取材で聞いたムーア監督が
耳に手を当て子供のように「ア〜ア〜ア〜」と聞こえないフリをするくだりは
典型的アメリカ人の行動を示しているようで、おそらくこのフリはわざとなんだろう思うけれど、
それを監督自身が映画の中で演じる事が非常に巧い演出だと感じました。
「おいおいムーア、散々自慢しておいて自国の短所は聞こえないフリか!」
みたいなツッコミ感情は、監督に巧く誘導されているものなのかもしれません。
 
この映画は、これを観たアメリカ人がどうするか、
と思うだけで終わることなく、
同時にこれを見た日本人は対岸の火事で済ませてしまうのか他山の石とするのか
問題を自分のものとすることに意味があるのだと思います。
福祉系の問題は自分のところで顕在化しないと何かと実感が無く、問題の重さに気が付かないものなので
「シッコ」は多くの人に観られることが望ましい作品だな、と思いました。
嗚呼よい2時間だったぞな…
やはり引きこもってばかりはおれん…