画竜点睛を欠くとはまさにこの事である

昨日12日に起こった悲劇はふたつ。
 
一つ目は学校で起こった悲劇であり奇跡である。
 
昨日僕は金曜日今期最後の授業を受けるために出かけたのだが腑抜けたことに遅刻をしてしまった。
最後だから期末テストが予定されているのになんという愚行だろう。
福祉系講義のテストというのは大抵大きく二つに傾向が分かれる。
一つは専門用語がちりばめられて、その単語と現場の現状の理解度を測られるもの。
もう一つは、講義を通しての感想である。
後者は他学部にとってみればアホかと言うほど易しい課題であり、実際アホかと言うくらい容易に回答できる。
金曜の講義は後者タイプのテストと記憶していたので、
正直、遅刻してもそれほど痛いものではない、と踏んでいた。
この予想はある意味裏切られることはなかったのだが、教室で待ち受けていたのは驚愕の展開であった。
30分ほど遅れて教室に入るとまだ講義中で、試験は始まっていなかった。
心が新雪のように純真だった僕は素直に空いている席に座り、手持ち無沙汰に先生の話を聞き流していた。
講義時間が終わるまで。
先生が話をやめない時点で薄っすらと芳しくない雰囲気が漂ってはいたのだが、
彼女は生徒に「今日の感想を用紙に書いて提出するように」としか言わなかった。
そして次の瞬間、僕は自分の耳を疑った。
 
「課題レポートはここに提出するように。」
 
はいはいレポートね、
……レ、レポート?
 
厭な空気はその瞬間に霧散した。
僕は、コーラを飲んだらゲップが出るのと同じくらい当然に、一瞬で状況を理解した。
どうりでテストがないわけである。そもそもテストなど存在しなかったのだ。
っ。え?え?どうしよ、どうしよ、助けて知得留先生。
こうなったら開き直って先生に謝るしか生き残る道は残されていない。
基本的に優しい先生なので、謝ればどうにかなるだろうと都合のいい予想しかせずに先生の許へ行き
「…すいません、テストだと思っていてレポートをまったくやっきませんでした。…どうすればいいでしょうか。」
と平謝りである。
「しょうがないわね、住所を書くから郵送してちょうだい。」
 
…え??
 
なにこの謎ジャムを作っている奥さんよろしくの了承(一秒)は…
ありがたいのだけれど余りにいい方向に話が進むので少し狼狽。
「え? あ? い、いつまでに送ればいいですか?」
「2月何日かが採点締め切りだから、それまでには送ってほしいな〜」
 
…え?2月??
締め切りが約一ヶ月延びてますよおばさん先生。
いえ、あなたが良いなら私は別に何も言ひませむ。
ありがとうございます。
ただでさえレポートの課題が「講義を通して学んだことをまとめてください」という感想文タイプだったので
この忙しくなってくる時期の足かせにすらならないと思われるので楽勝もいいところです。
怪我の功名、僥倖というか、意外や意外、居直り強盗的な発想も時には有意義な結果を生み出すものです。
しかしこれ運はいいけど、なんとはなしに我が福祉学部特有のゆるさであるといえるでしょう。
実際「大学一単位が取りやすい学部」との評判には嘘偽りはありません。
他の学部生だと僕のようなケースは「絶対にない」と言われますが、うちの学部生だと「その」可能性を否定できないと思います。
普通に許してくれそうだもん。この緩さ、この学部大好き。
 
二つ目の悲劇は深夜から明け方にかけて発生した。こちらに奇跡はない。
 
月曜日までに必着させなければいけない就職活動用の履歴書を昨夜だらだらと書いていた。
こういった書類には、まず鉛筆で下書きをしてからペンで清書するという方法があるが、
僕は消しゴムの力でペンの清書が薄くなってしまうとか、薄っすらと消え残っている文章が見えるとか
そういったものが嫌いなので、いつも下書きなしで直接清書をしてしまう。
そもそも用紙が代替の利く市販の履歴書だったので「ミスって何ぼじゃ」と意気込み、ミスりまくっていた。
もちろん一枚しかないESだったなら下書き的な事をしてもっとミスを恐れるが、今回は気にしなくて良いのだ。
しかしだからといってか大量にミスを犯し、大量に履歴書を消費してしまった。
たかが一枚書くためだけに。
学歴に「3000年 高校入学」と書くなど、螺子がぶっ飛んでるとしか思えないミスを連発しまくった。
大概ミスを連発すると志気とは、第一話二話が終わると乱れ始めるアニメの作画の質と同じようにどんどん下を向いてしまうものである。
テコ上げが必要なのだ。みんなで温泉に行く話などは都合が良い。
実に志気が上がる。
しかしそれをさらに上回る、め〜てるの気持ちの掲載順を間違えたり、ローゼンの原稿を紛失させたり(?)するようなミスが時には起こってしまう。
悲劇は予期せぬ時にやってくるからこそ悲劇なのだ。
 
履歴書には「印」を押す部分がある。
名前の脇である。
僕は朱肉に印鑑を押し付け、一度関係のない端切れに写りを試し、清書に望んだ。
アニメのように「ポンっ」と音がするわけではないが、気持ちは似たようなものである。
すっと印を離し、朱肉の写りを見てみると…
履歴書に写った紅い文字には違和感を感じた。
血の気が引く。
 
……印の上下が逆さまだった。
 
僕がッ、泣きやむまでッ、泣くのをやめないっ!
ど、どうしてやろうかと思う、この寝ぼけた脳みそを。
まさしく画竜点睛を欠くとはこのこと以外の何ものでもない。
さすがにこのミスはごまかせないのではないだろうか。
全てが台無しである。また書き直しだ。
何度20文字もあるクソ長い学部学科名を書き込まなければいけないのか、これは自らを苦しめる拷問だ。
眠い。テンションがおかしくなってくる。
しかし履歴書に文字を書くことで朦朧としたアタマが一杯になっていて判断が出来ない。ちょっとハイになってきたぜぇぇ…
また1枚書きあがったけれどミスがある。
…もうちょこっとのミスには目をつぶってしまおう。人生には妥協が必要だ。
「趣味:読者」と書いたことなんてミスではない。
上から「者」を「書」に書き直してゲームセットだ。
写真を貼って完成。
 
たかが一枚の履歴書を書き上げるのに何時間かかった?こんなんじゃ他のESや筆記試験が思いやられるったらありゃあしない…
このやるせない悶々とした気分は、ゲーセンに開店時間から行って戦場の絆をやりまくって解消することにした。
ドム萌え。
もう頭の中にはこの4文字しかない。